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ミュンヘンで出会った神楽団に
惚れた私の神楽体験
記。
◆インデックス
◆1:神楽との出会い
◆2:ミュンヘンの虹
◆3:どちらのご出身?
◆4:私の自然崇拝思想
◆5:豹変する神楽団
◆6:2005年6月のドイツ公演
◆7 :お囃子デビュー
◆8:パリの島根県人会公演
◆9:神々しい「神主神楽」
◆10:石見と出雲と神主神楽
◆11:神楽に魅せられて
ご意見、ご感想
を
お寄せ下さい。
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第7話 お囃子デビュー
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レストラン神楽
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20
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滝つぼ神楽解説
No.7-1. 演目部長が直前に?
今年(2006年)5月14日〜16日、私は出雲大社で行われる「例大祭」に参加しま
した。3
日間の長丁場には平日も含まれるため、奉納する団員を確保するのもひと苦労です。3日間ずっと連続で奉仕し続けたのは恩田本部長と私の他、数名の団員だけ
で、あとはローテーションを組んで都合のつくメンバーが順繰りに来ては帰り、また別のメンバーが来ては帰りと、色々なメンバーが少しずつ参加していまし
た。
私の所属する山王寺神楽団は出雲大社教の本部として106年間ずっとご奉納を続
けているのですが、山王寺社中だけで3日間のご奉納をこなすには負担が大きすぎるので、各支部長さんに「この日に何人出してくれ」と頼んでおいて、各支部
から都合のつく人に応援に来てもらいます。そのため、その日、その場になってみないと、実際に誰が来るのかはわからないのだそうです。
私がいつも「次の演目は何ですか?」と聞くと、必ず「検討中」と答えるので、私はずっと「私の事をおちょくってい
るんだ」と思っていたのですが、それが本
当である事を確信した事件が起こりました。三島さんというメンバーが「明日は来ない」と言っていたのに、私が「来て来て」とお願いしたら、突然次の日、来
てくれたのです。彼が来るまで、彼が来る事は誰も知らない事だったにも関わらず、本当はいないはずだった彼は、気がつけば次の演目では物凄い長い台詞の大
主役を務めているではありませんか。この役は三島さん以外に誰もできる人がいない役なので、せっかく三島さんが来たから、この演目をする事にしたのだ、と
いう事でした。
神楽団のメンバーは「お囃子が得意な人」、「舞が得意な人」など、それぞれに特徴はあるものの、基本的には殆どのメンバーが一人で何役もこなす事ができる
ので、演目部長はその時に揃ったメンバーの顔を見て、どんな演目を演じる事が可能であるかを瞬時に判断し、演目開始の直前に次の演目を決定します。揃った
メンバーだけでなく、観客が大勢入りそうな昼間の時間帯に、「大蛇退治」などの有名な演目を出したり、夜になって観客が少ない時間帯には、「厳粛なお清め
の儀式」をするなど、一日全体のスケジュールも考えながら決定するのです。
最初私は「直前になるまで次の演目が決まっていないなんて、何ていい加減なんだろう」と思ったのですが、実際に演目部長はこうしたすべての状況を考慮した
上で、「良い加減」を適宜判断して行くのだという事
が理解できるようになり、演目部長の熟練された見事な判断力に対し、心から感動した私でした。
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No.7-2. 突然できたお囃子
ドイツで初めて神楽を見た私はドイツで見た2つ以外の他の神楽の演目を見た事がありませんでした。もっと神楽を知りたいと思ってい
た私は、「3日3晩も神楽をやり続けるというのであれば、色々な神楽を見る事ができる」というのを楽しみにご奉納に参加していたので、第一日目は客席からじっと神楽を見ていま
した。
例大祭は出雲大社の大きなお祭なので、私達神楽団だけでなく、獅子舞や、笛吹きなど、大社のあちこちで色々な出し物が行われており、参拝客は参拝したり、
色々な出し物を見たり、出店で買い物をしたりと、自由に境内を歩き回るのです。中には最初から最後まで神
楽を見る人もいるのですが、殆どの人は神楽公演を見に来たのではなく、参拝が目的で来ているので、行きす
がりに神楽の舞が目に留まってしばらく神楽を見ると別のところに行ってしまう人が殆どなので、「真剣に神
楽を見る」という観客は殆どいませんでした。
ところが私だけは、「はるばるフランスから神楽を見に来たんだから!」と力が入っているので、神楽団達を最初から最後まで穴が開くような勢いで真剣に見つ
めていたのです。小河内支部長の新田さんは40年級のベテランで神楽で緊張する事など滅多にないそうなのですが、「あんまり真剣な目で見つめられちょるか
ら、久しぶりに緊張して、汗かいてしもうた」と私に言っていました。
私はお囃子のリズムを掴みたいと真剣に曲を聴き続けるのですが、西洋音楽教育の固定概念が邪魔をして、リ
ズムを掴もうといくら努力して努力して努力しても、どうしても理解する事ができませんでした。
ところが、「神楽団のファン」という方のお宅でお夕食をご馳走になった時のこと。そこの家のお孫さんも大の神楽ファンだとかで、チャンガラ(手拍子)のおもちゃを叩き続けたのです。ずっとやっているので見かねた三島さん
が「ほら、こうするんだよ。テンテコスッテン、テンテン。簡単だろ?」と、その子に教えてあげていたのです。「なるほど、テンテコスッテン、テンテンか。テンテコスッテン、テンテン。テンテコスッテン、テンテン。」神楽の楽屋に戻ると、「手拍子をやらせて下さい!」とお願いして、実際に手拍子を持ってリズムを取ってみました。テンテコスッテン、テンテン。「きゃあ、できた!」という事で、そのまま次の演目に初出演。3人目の「手拍子」として、隣の人を見ながら何とか奏楽をこなしました。
稲田ヒメの役は3日間で1回しか出番がなかったのですが、手拍子ができるように
なってからというもの、お面をつけて立ってるだけの稲田ヒメより、演奏しながら舞台も見る事ができる手拍子の方が面白くなってしまった私は、ずっと手拍子
をやっていました。手拍子はいつも2人〜3人で一緒にやるので、私も「真似すりゃいいや」という事でお気楽に出演していたのです。一人になる時は舞台裏で
出番を待っている誰かがいつも楽屋裏から援護射撃に手拍子をやってくれるので、安心して演奏していました。
ところが、ある時、初めて見る演目が始まりました。私達は全部で12人しかいないはずのに、次から次へと新しい人が舞台に登場してくるのです。ちらっと楽屋を覗けば誰もいない。「あれ、おかしいな。」数えてみると12人全部
が舞台に出ているではありませんか。「あれ、もしかして手拍子は私一人?」と、気づいた時にはもう時遅し。奏楽が始まり、私は一人で何とか手拍子をこなし
ました。「最初から私を一人にするつもりでこの演目を選んだんでしょ! ひ、ひ、酷い」と、舞台が終わってから抗議した私。「いやあヒメ。ちゃんとできて
いましたよ。上等、上等。」 まだできるようになったばかりなのにひとり立ちさせるなんて、なんと無謀な。とは言え、確かに一人にさせられて、演奏に自信
がついたのは確かでした。
こうして突然お囃子のリズムが掴め、「手拍子」という奏楽ができるよ
うになったのは、「きっ
と、ご奉
納を通して身が清まり、神様からお許しを頂いたからであろう」、と私自身は解釈しました。「神楽では、人間の身体に神様が降りてこられるので、神様の道具と
して自分を使って頂くつもりで神楽に取り組ん
だ人の方が、努力して自力で上達しようとする人より、ラクに早く上達する事ができる」と、私が思ってた通りの事が実際に自分自身の身に起きて、実証された
のでした。
筆:滝つぼ 2008年1
月
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やがて夜のご奉納となりました。これまで「神楽公演」としてステージの上で観客を相手
に舞う神楽しか見た事がなかった私にとって、「誰もいない真っ暗な場所で神楽を舞い続けるというのは、ちょっと虚しいよね〜」という気がしていました。5月だというのに山陰地方の春はまだ寒く、白衣と袴しか持っていなかった私にとって夜
のご奉納は凍える程の寒さでした。「ねえ〜、誰もいないから、もう辞めて帰ろうよ〜」とつい口がすべってぺロッと言いそうになったくらいです。
ところが身体をがたがた震わせながら手拍子を演奏していると、いつの間
にか身体が次第にポカポカと暖かくなって来るのです。こうして演奏しているうちに、突然私は「そうか。神
楽は神様に捧げるものだから、観客が
いようがいまいが関係ないんだ。」と気がついたのです。その途端、何か心地よいエネルギーのようなものが天から降って来て身体全体を包むような感覚を受け
ました。
「ああ、きっとこれが神様からのお恵みなんだ。」私にはそんな風に感じられたのでした。
夜になるとお面をつけず、お清めの儀式のような演目をする事が多くなるのですが、その時は、4人の舞い方がそれぞれに一人ずつ、東を清め、西を清め、南を
清
め、北を清め、と四方を清めて行く舞をしていました。「この方角を清めます」と、刀でサッと一切りする所作をすると、その刀からエネルギーのようなものが
飛び出して来て、そのエネルギーがここを基点として出発してその方角にどこまでもどこまでも広がって世界中のすべての人にお恵みを与える。また別の方向に
も同じ事をして、今度はその方角に向かってお恵みが広がっていく。こうして4方を清める事で、ここを基点として、世界中すべてに神様のお恵みを広げて行
く。つまり「世界中に平和と幸せの光をここから発信しているのが神楽なんだ」、と初めて気がついた私は驚きと感動で身体が震える程でした。
そして私は「そうか。ご奉納を通して自分達の方が神様にサービスを提供しているのだと思っていたけれど、実際にお恵み
を受けているのは私達の方だったんだ。」と突然悟ったのです。このような神様からの有難いお恵みを最初に
受けているのが私達神楽団。私達はなんと素晴らしい役柄を許されてこのステージで舞っている事だったのだろうか。この事に
気づいた私は自分がこうして神楽団の一員としてご奉納に参加する事をお許し戴けた感謝の気持ちで胸がいっぱいになったのでした。
筆:滝つぼ 2008年1
月
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