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神楽に魅 せられて 

ミュンヘンで出会った神楽団に

惚れた私の神楽体験 記


インデックス

◆1:
神楽との出会い

◆2:ミュンヘンの虹


◆3:どちらのご出身?


◆4:私の自然崇拝思想


◆5:豹変する神楽団


◆6:2005年6月のドイツ公演

◆7:お囃子デビュー
 

◆8:パリの島根県人会公演


◆9:神々しい「神主神楽」
 

◆10: 石見と出雲と神主神楽

◆11:
神楽に魅せられて




ご意見、ご感想 を
お寄せ下さい。





第10話 石見と出雲と神主神楽
レストラン神楽



1月19日(土)
6時〜10時
20 ユーロで食べ放題!
(飲み物、デザートは別)

ドイツ人と日本人の交流の夜!
ジャズの生演奏、カラオケなど
楽しい企画が盛りだくさん!


 

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滝つぼ神楽解説
No.10. 人間の叡智

ドイツにいると特に感じ るのが「あんた達には融通という言葉はないのね」という事です。ドイツ人の場合、こちらがどんなに事情を説明しても、「ルールだから」という一点張りで、 何を言っても「ルール、ルール」と同じ言葉を繰り返すだけ。 「もしかしてこの人は、サイボーグかロボットか何かなのかも知れないわ」と思えてしまうような人に出会う場面も多いものです。

もちろん、こういう類の人材も時と場合によっては必要であるものですので、そのすべてを否定するわけではありませんが、私の 個人的な意見としては、「融通を利かせる事」というのは、瞬時の鋭い判断力を必要とする高度な能力であり、これはまさに「人間の叡智」であると思います。 私が「神楽団の何が凄い」と関心するかと言えば、この「融通を利かす能力」の素晴らしさなのであります。

例えば、神楽団には、舞台の大きさに「このサイズでなければ駄目」というものはなく、会場がでかければでかいなりに、小さけ れば小さいなりに、彼らは臨機応変に合わせてしまうのです。

奏楽の例で言えば、2004年 のドイツ公演では笠間さん(*注)という方が大太鼓を叩いておられました。ジークブルグ公演の翌日のメアブッシュの公演では、前日の叩き方とは大きく異な り、身体ごと体当たりするかのように強く叩いていたので、「今日は、随分と気合が入っておられるのですね」と言ったところ、「いやいや、昨日の会場は音響 効果が良すぎて、強く叩くと響きすぎるから、控えめに叩いていたんですが、今日の会場は昨日の会場よりずっと大きいから、思いっきり叩いているんです よ。」と言いました。

舞い方も同じです。公演の直前に舞台を見ただけで、「このくらいの大きさならこうしよう」という事を全員が察知すると、ここ で大きく回る、とか、今回は小 さめに、とか、今日の舞台は低いから飛び降りちゃおうとか、、、つまり、神楽団には、「こうじゃなきゃいけない」という規定のものはなく、与えられた環境 で「こうなら、こうしよう」と、最大限の演出ができるよう、団員全員が瞬時にして判断してしまうのです。

演目の選び方もそうです。海外公演のように先に演目を決めておく場合は別ですが、出雲大社の例大祭のような3日3晩の長丁場 の時には、神楽団が自由に演目 を決めるのです。普通なら何時から何時にどの演目、、と予めプログラムを組んでおくものですが、例大祭にそんなものは存在しません。観 客に子供達が大勢いそうな日中には、面白おかしい滑稽な演目を選び、子供達を飽きさせません。逆に夜の厳かな雰囲気の時には、お清めなど、厳かで神聖な儀 式的な ものを演じ、神楽が神様のためのものであったのだと、改めて認識させられます。それぞれ一つだけ神楽を見て帰った人達はそれぞれに、「神楽は滑稽なもの だ」と理解する人、「神楽は迫力があるものだ」と理解す る人、「神楽は神聖なものだ」と理解する人、と、それぞれ別々に神楽を理解する事になるのだろうと思います。

伝統を重んじる高尚な芸術は、立派である反面、一般庶民や子供達にとっては「退屈な存在」という印象を与えてしま うものです。逆に観客に受ける事を重視すれば、「民衆に神を伝える」という神楽の本来の意義からはずれて行き、サーカスのようなエンターテイメント化して しまうものです。何事もそうですが、長所は同時に短所でもあり、何かひとつに偏る事によって、別の何かを失うのは世の常であると思います。

そのどちらにも偏らない出雲神楽は、時には面白く、時には激しく、時には厳かに、時にはしっとりと、時と場合、観客の質な ど、その時、その場に応じて変幻 自在する。「これが出雲神楽だ」という形がクルクルと変化し、理解したと思った途端に、まったく別の顔を見せてくれるのです。私にとって、出雲神楽の最大 の魅力は彼らのこの「いい加減さ」であり、「それはまさに人間の叡智である」と思う私は、彼らを心から尊敬するのでした。

(*注:笠間さんは先 日、急性白血病で亡くなられました。ご冥福をお祈り致します。)

筆:滝つぼ 2008年1 月



Language : Japanese, English, Deutsch, Españo

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